世田谷線 300系 1999年〜
(デハ300A形)デハ301A〜310A号 東急車輛製造
(デハ300B形)デハ301B〜310B号 東急車輛製造
300系は玉電時代のデハ150形以来35年ぶり、世田谷線で初めての新型車両として平成11(1999)年から製造が開始され、同年7月に登場した2車体連接車です。2001年までに10編成20両が東急車輛製造で製造され、世田谷線の在来車両18両を全て置き換えました。東急ではデハ200形以来の連接車ですが、2車体で1両とされていたデハ200形とは異なり、下高井戸方がデハ300A形(MC1)、三軒茶屋方がデハ300B形(MC2)と別形式が振られ、これを総称して300「系」と呼称されています。
車体は軽量ステンレス製、流線型を描いた前面は鋼製で、熊本市交通局9700形と同じタイプの側窓ガラス(ノルウェー製)とプラグドア(ドイツ製)が採用されるなど、当時の最先端であるLRVスタイルが意識された一方、台車については新型車両導入の構想に基づき、先行して在来車両の台車更新を行っていたため、デハ70形・デハ80形が使用していたTS-332台車が再用されています。なお300系は全10編成で30台車が必要でしたが、再用できる台車は28台車に留まることから、2001年3月に最終増備された309・310編成では不足分の2台車が連接部のT台車として新製されたほか、2004年には定期検査の工期短縮を目的としてさらに1編成分の3台車が新製されています。これにより定期検査時は予め整備済みの予備品と交換することが可能となり、台車や主電動機等、主要な機器類は300系全編成で循環されています。
第一編成の301編成は世田谷線の従来の車体色だった緑系統の車体色が採用されましたが、302編成以降は1編成ごとに異なる車体色となり、全10色(イラスト参照)の豊富なバリエーションが生まれました。さらには2000年に東京都広告物条例の改正により車体利用広告規制が緩和され、300系の車体ラッピング広告が「世田谷線モントラム」としてパッケージ販売されたことから、期間限定の車体色も数多く登場しています。
制御装置は三菱電機製のIGBT-VVVFインバータ方式、回生機能付きの制動装置(2000年10月に登場した305編成からは電制併用形に変更され、301~304編成も同様に改造されました)を採用、主幹制御器には鉄道線の7700系と同型のワンハンドルマスコンを装備し、懸案だった冷房装置も設置されるなど、鉄道線では既に以前から導入されていましたが、いずれも世田谷線では初の採用となりました。そのほか車内での動線確保に向けた車体幅の20cm拡張、1人掛けクロスシートの採用など、世田谷線特有の状況にあわせた快適な空間作りを目指して設計されています。
2000年7月に登場した304編成まではバリアフリー対応として左右の出口ドア1箇所に車椅子乗降用リフトが取り付けられましたが、2001年2月のホーム嵩上げによるノンステップ化で不要となり現在は撤去されています。なおノンステップ化以前に登場していた301〜306編成は、プラグドアを交換し、ステップを埋め立てる改造工事が施されています。
全10本の製造中にマイナーチェンジが重ねられ、機器類や車内設備の違いから大別すると1次車が301編成、2次車が302編成、3次車が303・304編成、5次車が305・306編成、6次車が307・308編成、7次車が309・310編成と分類できます。特に305編成では前述した制動装置以外にも座席の仕様・配置が見直され、定員が4名増となっています。
2002年にはICカード乗車券「せたまる」、2007年にはICカード乗車券「PASMO」サービス開始に伴い、車内にリーダーの設置等が行われたほか、2005年から国内メーカー製プラグドアへの交換(2016年に完了)、前面下部や側面腰部の無塗装部分への車体色ラッピング(2007年に完了)、2019年からは側窓枠の改修が進められ、外見上も大きく変化しています。
基本車両編成表
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各車両のプロフィール
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主要諸元表
1999年の301編成登場時のデータを掲載しています。
最大寸法 | 長さ23,980mm×幅2,500mm×高さ3,945mm(2両連接時、パンタ折り畳み時) |
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自重 | 15.35t(A・B車共) |
定員 | 132(座席32)人(折りたたみ腰掛不使用時は座席28人) |
車両性能 | 最高速度40km/h 加速度3.0km/h/s 現速度(常用)4.4km/h/s (非常)5.0km/h/s |
集電装置 | シングルアーム式パンタグラフ(電磁カギ外し・ばね上昇・空気下降式) |
台車 | M台車:TS-332 T台車:TS-332T(連接台車) 直結式コイルばね台車 固定軸距1,600mm |
基礎ブレーキ装置 | 片押し式踏面ブレーキ |
駆動方式 | 中実軸平行カルダン式 歯車比67:11=6.09 |
主電動機 | TKM-300 三相交流かご形誘導電動機 定格出力60kW |
制御装置 | ワンハンドル力行ブレーキ制御器 IGBT-VVVFインバータ方式(1C2M2群) |
ブレーキ装置 | HRDA-2 電気指令式電空併用ブレーキ(回生) |
補助電源装置 | IGBT静止形インバータ(冷房用電源兼用)20kVA(2台/編成) |
蓄電池 | 焼結式アルカリ電池 DC100V:20Ah DC24V:80Ah |
電動空気圧縮機 | 往復形単動2段圧縮式 吐出量600l/min(2台) 除湿装置付 |
戸閉装置 | 電動両開式プラグドア |
点灯装置 | 室内:交流蛍光灯(20W・40W)、直流インバータ蛍光灯(40W) 前照灯:シールドビーム(200W/150W) 尾灯:LED |
送風装置 | ラインフローファン |
冷房装置 | 21,000kcal/h(2台/編成) |
暖房装置 | 客室:温風ヒータ860W×16個/編成 乗務員室:温風ヒータ800W・シーズワイヤ形(足元)200W |
非常通報装置 | 乗客と乗務員との通話可能形 2台/編成 |
放送装置 | 自動放送 車外放送機能付 |
行先運行表示器 | 運行表示器による一括自動設定方式 正面表示:行先・運行LED表示 出入口:LED表示 |
車内表示器 | LED2段表示 4台/編成(運転室裏及び車両妻面に配置) |
リフト装置 | 車椅子乗降用リフト(上り側・下り側 各1台) |
製造所 | 東急車輛製造 |