玉川電気鉄道 無蓋貨車1〜20号 1920年〜1938年
東京横浜電鉄 無蓋貨車8〜20号 1938年〜1942年
東京急行電鉄 ト1形(ト1〜13号) 1942年〜1966年

玉川電気鉄道 無蓋貨車1〜20号→東京横浜電鉄 無蓋貨車8〜20号→東京急行電鉄 ト1形(ト1〜13号) 1920年〜1966年

 1920年9月の1,372mm軌間への改軌に合わせ、同年11月に玉川電気鉄道の自社工場で製造されました。20両全車が同時に入籍されたとの記録がある一方、車両竣工図表には「大正九年 大正十一年」製造との記載があり、当時の電気事業要覧では1921年時点に15両が在籍していたとの記録もあることから、1920年には15両がまず製造され、残りの5両は1922年に製造された可能性があります。車両竣工図表上の形式称号は「四輪附貨」で、旅客車両・電動貨車と区別するため、当サイトでは無蓋貨車1〜20号と記載しています。
 連環式連結器を装備し、電動貨車1〜5号に牽引されて砂利輸送に使用されましたが、無蓋貨車1・2号は1934年に散水車に改造された記録もあります。1937年上旬に玉電ビル建設により天現寺橋を介した東京市電との直通運転ができなくなったことで、貨物輸送が大幅に減少し、同年10月に無蓋貨車1〜7号が廃車となりました。
 1942年の東京急行電鉄成立による一斉改番により、残る13両にト1形の形式称号が付与された後、1943年8月に6両が1,435mm軌間に改軌のうえ東急京浜線に転出しました。1953年の調査資料によると当時玉川線に在籍した7両の旧番号は8〜12・19・20号とされており、改番時に1号から順番にト1〜13号に改番され、ト6〜11号が京浜線に転出後にト12・13号をト6・7号に改番したのか、何らかの事情で番号順に改番が行われず、13〜18号がト8〜13号となり京浜線に転出したのかは不明です。
 デト3031号とともに社用品輸送や保線等で使用されましたが、1958年頃からは使用されなくなり、ト1〜6号が二子玉川園駅構内に長期間留置後1963年8月に廃車され、大橋車庫に留置されていたト7号も1966年6月に廃車となりました。

玉電歴史年表から

 玉電歴史年表から無蓋貨車1〜20号・ト1形に関する出来事を抜粋しています。


  • 【日不詳】無蓋貨車1〜20号が入籍

    ※実施日が不詳のため、月末である30日で登録しています。
    9月3日の改軌に2ヶ月遅れて、玉川電気鉄道の自社製造で20両が製造された。
    玉川電気鉄道時代は固有の形式称号が定められておらず、車両竣工図表では「形式称号四輪附貨」とされている。
    なお同竣工図表では「大正九年 大正十一年」製造との記載があり、当時の電気事業要覧では1921年時点に15両が在籍していたとの記録もあることから、5両は1922年製造の可能性が高い。


  • 【日不詳】無蓋貨車1〜7号が廃車

    ※実施日が不詳のため、月末である31日で登録しています。


  • 東京横浜電鉄と玉川電気鉄道が合併、同社の玉川線となる

    合併時点の資本金は東京横浜電鉄が3,000万円、玉川電気鉄道が1,250万円。
    東京横浜電鉄には電動客車52両、電動貨車5両、貨車13両が編入した。
    また玉川電気鉄道時代は各支線に路線名が付けられ、渋谷〜天現寺橋間は天現寺線、渋谷橋〜中目黒間は中目黒線、三軒茶屋〜下高井戸間は世田谷線、玉川〜砧間は砧線、玉川〜溝ノ口間は溝ノ口線と呼称されていたが(同社による一部申請資料には天現寺橋〜砧間を玉川線と呼称している例もみられる)、合併前後から軌道線全線の路線名を玉川線に統一している。


  • 東京急行電鉄成立に伴う車両改番を実施

    小田急電鉄、京浜電気鉄道との合併による東京急行電鉄成立に伴い車両番号が整理され、旧玉川電気鉄道の車両は0〜900番代が割り当てられた。
    16〜30号がデハ1形デハ1〜15号、36〜45号がデハ20形デハ20〜29号、46〜55号が30形デハ30〜39号、56〜66号がデハ40形デハ41〜51号、71〜75号がデハ60形デハ61〜65号、無蓋貨車8〜20号がト1形ト1〜13号に改番された。


  • 【日不詳】ト1形6両が京浜線に転出

    ※実施日が不詳のため、月末である31日で登録しています。
    玉川電気鉄道での旧番号13〜18号が東急京浜線(現:京浜急行電鉄)に転出し、ト5071〜5076号に改番されて使用された。
    ※ト8〜13号が転出したか、ト6〜11号が転出してト12・13号がト6・7号に改番されたと思われるが、1942年のト1形への改番の詳細は不明。


  • ト1〜6号が廃車

    廃車直前は二子玉川園駅に留置されていた。


  • ト7号が廃車

    廃車直前は大橋車庫に留置されていた。
    これによりト1形は形式消滅し、玉川・砧線から貨車(電動貨車デト3031号を除く)の配置がなくなった。


主要諸元表

玉川電気鉄道時代の車両竣工図表に記載されたデータを掲載しています。

最大寸法長さ6,096mm×幅2,193mm×高さ2,724mm
自重4.0t
積載容量6.12立方メートル・10.16t
台車2軸
ブレーキ装置手動制動機
製造所玉川電気鉄道自社工場