建設省、首都高速道路公団、東京都、世田谷区、東急の5者間で、新玉川線の国道246号線直下への渋谷〜用賀間地下化と玉川線の廃止、バス代行の方針が決定された。
世田谷線各駅紹介 上町車庫(上町駅構内)

所在地 | 東京都世田谷区世田谷3-4-3(事務所所在地) 東京都世田谷区世田谷2-5(車庫所在地) |
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敷地面積 | 1,316平方メートル |
建物面積 | 662平方メートル |
所属車両数 | 10編成20両 |
開設年月日 | 1969年5月11日 |
1969年完成当時の平面図

現在の周辺地図
沿革
1968年8月に玉川線渋谷〜二子玉川園間の廃止が決定すると、玉川線三軒茶屋〜下高井戸間は世田谷線として存続されることになり、同年12月から上町停留場の構内にあった約1,400平方メートルの社用地に車庫の建設が開始されました。この用地には1928年から1938年まで上町貨物停留場が設置されており、同停留場の廃止後には下りホームが移設され、出札所も設置されていましたが、車庫の建設により出札所は撤去され、下りホームは世田谷方に再度移設されました。
1969年に入ると、代行バス車庫への転用によって手狭になっていた大橋車庫の代わりに、順次完成した上町の留置線が暫定使用されましたが、5月11日に世田谷線としての再スタートと同時に上町検車区が設立され、11編成22両が所属する上町車庫の運用が開始されました。同年中には少し遅れて上町変電所の横に検車区事務所・検車庫が設置され、4番線から検車庫内まで引込線が敷かれました。この検車庫にはホイストやリフティングジャッキが備えられており、全般検査や重要部検査など定期検査、車輪交換等に使用されました。検車庫に収容できるのは1両分で、引込線も非電化であったことから通常の車両留置には使用されず、入出場時には2両編成を開放したうえで、係員の手押しで入換を行う必要がありました。
4本の留置線の収容量は8編成16両分で、3編成6両は本線留置の必要がありました。「新玉川線建設史」によれば、当初は下高井戸方の上下本線それぞれに並行して留置線2本を設置する第二期工事が計画されていましたが、1970年に2編成4両が江ノ島鎌倉観光に譲渡されたことから、計画は中止されたようです。
1998年11月には新型車両の導入とともに検車庫などの点検施設の改修を行うことが発表されました。この工事では、在来車よりも車体幅が20cm広い新型車両300系の導入に対応するため、4本ある留置線を3本に敷き直し、下高井戸方の上町1号踏切道付近の下り本線から分岐する留置線1本を増設するとともに、検車庫を新築するもので、1999年3月から改修工事が開始されました。
2000年12月に工事が概ね完成し、旧検車庫は2001年3月のデハ152号解体作業をもって使用停止されましたが、2階に検車区事務所があったことからしばらく残置されました。一時期は世田谷線管区事務所の建替えによって旧検車庫が活用され、庫内に仮事務所が設置されましたが、2002年10月に上町駅舎が完成すると両事務所が駅舎内に移転し、旧検車庫は撤去のうえ業務用駐車場となりました。
検車区の組織は開設から6回にわたって変更されています。1969年の開設当初には大橋検車区から引き継いだ上町検車区が検車業務を行い、定期検査は元住吉工場が担当しましたが、1977年4月には長津田車両工場に移管され、検車業務は同工場の上町班が行いました。1983年9月には検車業務が長津田車両工場から長津田検車区に移管され同検車区の上町班となりましたが、定期検査は移管されず、現在まで一貫して長津田車両工場が担当しています。検車業務は2000年8月に雪が谷検車区に移管され同検車区の上町班となりましたが、2006年12月に雪が谷検車区自体が東急レールウェイサービスに移管され、同社の雪が谷検車区となりました。2019年10月の東急電鉄への分社化と同時に、東急レールウェイサービスが東急電鉄に統合され、現在は東急電鉄の雪が谷検車区上町検車班として検車業務が行われています。
玉電歴史年表・世田谷線データベースから上町車庫に関する出来事を抜粋しています。
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5者間で「首都高速道路3号線(2期)の建設に伴う現玉川線及び新玉川線の処理方針」の覚書が締結
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【日不詳】上町車庫の建設開始
※実施日が不詳のため、月末である31日で登録しています。
上町停留場下りホームが現在の検車庫付近から、三軒茶屋方の現在の位置に移設された。
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上町検車区が設立
上町貨物停留場の跡地、約1,400平方メートルに留置線4本と検車場、洗車場を備えた上町車庫が設置された。開設以降も1969年末にかけて順次工事が進められ、工事完成まではデハ89・90号の車内が仮の事務所や寝室として使用された。
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デハ89・90号が廃車、江ノ島鎌倉観光株式会社に譲渡
廃車直前には休車となり、上町車庫で係員寝室や検車区仮事務所として使用されていた。実際の廃車日より早く同年夏頃には極楽寺に発送されていたとされる。
江ノ電ではデハ89号→603号、デハ90号→604号となり、2両固定編成に改造されて1970年12月5日に入籍した。
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検車業務が上町検車区から長津田車両工場上町班に移管
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検車業務が長津田車両工場上町班から長津田検車区上町班に移管
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プレスリリース「世田谷線で車体更新と点検施設の改修工事に着手」が発表
世田谷線に2両連接の更新車両を1999年と2000年に各1編成ずつ導入するとともに、上町駅構内の検車庫などの点検施設の改修を行うことが東急社長室広報担当からプレス関係者向けに発表、東急公式サイトの「TOKYU TOPICS」にも掲載された。
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上町車庫留置線設置工事開始
上町車庫改良後の留置本数確保のため、上町1号踏切道と上町2号踏切道の間の下り本線脇への留置線の設置工事が開始された。
この工事が一連の上町車庫改良工事の始まりとなった。
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上町車庫留置線使用開始
上町1号踏切道と上町2号踏切道の間の下り本線脇に設置され、2編成が留置可能。
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上町車庫旧1・2番線使用停止・撤去開始
撤去作業後、跡地に新検車庫の建設工事が始められた。
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上町車庫新検車庫・新1番線使用開始
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上町車庫旧4番線・ピット上屋使用停止・撤去開始
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上町車庫新3番線設置工事開始
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上町車庫新3番線使用開始、旧3番線使用停止・撤去開始
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上町車庫新2番線設置工事開始
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検車業務が長津田検車区上町班から雪が谷検車区上町班に移管
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上町車庫新2番線使用開始
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世田谷線管区仮庁舎に移転
上町車庫旧検車庫の内部が2階建てに改装して仮庁舎として使用された。
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上町駅新駅舎完成、世田谷線管区・雪が谷検車区上町班事務所が駅舎内に移転
上りホーム入口に3階建ての新駅舎が完成し、2階に世田谷線管区事務所と雪が谷検車区上町班事務所が移転した。仮庁舎として使用された上町車庫旧検車庫は11月にかけて解体され、1999年から始められた一連の上町車庫改良工事が完成した。
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検車業務が雪が谷検車区上町班から東急レールウェイサービス雪が谷検車区に移管
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世田谷線の運営が東急株式会社から東急電鉄株式会社に移行
1938年に玉川電気鉄道株式会社と東京横浜電鉄株式会社が合併、1942年に東京急行電鉄株式会社と商号変更されて以来、世田谷線は東急本体の一部として運営されてきたが、2019年10月1日から鉄軌道事業の分社化により設立された東急電鉄株式会社に運営が移行された。なおこれに先立つ9月2日には、東京急行電鉄株式会社の商号が東急株式会社に変更されている。
また世田谷線の検車業務は、2006年12月から東急レールウェイサービス雪が谷検車区に移管されていたが、東急電鉄に統合され雪が谷検車区上町検車班となった。
設備の概要
上町車庫の留置線は上町駅上りホームに隣接して3本と、下高井戸方の上町1号踏切道付近に下り本線と並行して1本の計4本が設置されています。き電入切標の記載によれば留置線の名称は、上りホーム隣接の留置線は下り本線側から順に「1」「2」「3」番線、下高井戸方の留置線はそのまま「留置線」とされています。4本とも2編成が収容可能で、残る2編成は終電から初電にかけて上下本線上に留置されています。
1番線の終端部にはホイストやリフティングジャッキ、ピットを備えた検車庫が設置されており、定期検査や改修工事などで使用されていますが、旧検車庫と違って通常の車両留置にも使用されています。検車庫の終端部には大型の搬入口が設けられ、南側の道路に接続しています。世田谷線の車両の定期検査は長津田車両工場が担当しており、検査車両を検車庫に入庫させて台車や検査対象の主要機器類を取り外し、この搬入口からトラックで長津田車両工場に運んで検査する形が取られています。なお、現在は台車や一部機器については、予め検査済みの機器と交換する手法が採用され、検査期間の短縮が図られています。検車庫2階と上町駅舎2階には上下本線を跨ぐ業務用通路が設置されており、線路を渡らずに事務所から車庫へ移動することが可能になっています。
2番線の終端部には洗車場、下高井戸方にはピットが設置されており、洗車場では手作業で洗車が行われています。東急線の他の検車区には自動洗車機が導入されており、日常的に手洗いされているのは世田谷線だけです。
世田谷線写真アーカイブから
世田谷線写真アーカイブから上町車庫で撮影した写真を抜粋しています。
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デハ86号の車内から見た上町車庫/1999年4月2日 上町車庫
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上町車庫に留置中のデハ76号/1999年4月3日 上町車庫
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上町車庫で休むデハ71号・デハ77号/1999年4月8日 上町駅(上町車庫)
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上町車庫に留置中のデハ85号/1999年4月13日 上町車庫
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P6運行で出庫準備中のデハ72号/1999年4月14日 上町車庫
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上町車庫に留置中の84-85編成/1999年8月20日 上町車庫
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上町行きの方向板を掲出して留置中のデハ82号/1999年8月20日 上町車庫
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上町車庫に単車で留置中のデハ85号/1999年10月1日 上町車庫
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上町車庫に単車で留置中のデハ86号/1999年10月20日 上町車庫
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上町車庫に留置中のデハ86号・デハ77号/1999年10月28日 上町車庫
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A8運行で上町車庫に入庫するデハ152号/1999年11月9日 上町車庫
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上町車庫に単車で留置中のデハ86号/1999年11月9日 上町車庫
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新製試運転を終え入庫する302編成/2000年3月1日 上町車庫
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上町車庫に留置中の302編成「東急TOPカード」/2000年3月12日 上町車庫
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全般検査入場中のデハ152号の横に入庫する154-153編成/2000年3月18日 上町車庫
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P6運行で出庫する72-71編成/2000年4月12日 上町車庫
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上町車庫に留置中の86-65編成/2000年5月4日 上町車庫
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上町車庫に留置中のデハ86号/2000年5月4日 上町車庫
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新製試運転を終えて入庫する304編成/2000年7月5日 上町車庫
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留置線のデハ86号と下り本線のデハ82号の並び/2000年8月3日 上町車庫
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デハ86号が臨時検査中のため単行で留置中のデハ77号/2000年8月11日 上町車庫
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方向板が差され、P6運行出庫準備中の82-81編成玉電塗装/2000年12月22日 上町車庫
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P6運行で出庫入換中の82-81編成玉電塗装/2000年12月22日 上町車庫
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上町車庫に留置中の82-81編成玉電塗装/2000年12月26日 上町車庫
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上町車庫に留置中のデハ82号玉電塗装/2000年12月26日 上町車庫
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上町車庫に留置中の306編成/2001年1月5日 上町車庫
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上町車庫に留置中の82-81編成玉電塗装/2001年1月5日 上町車庫
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雪の上町車庫で出庫準備中の82-81編成玉電塗装/2001年1月27日 上町車庫
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デハ82号の解体入場により単車で留置中のデハ81号と朝運用を終えた301編成「『サザエさん』マナー告知」/2001年1月30日 上町車庫
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広告取外しのため1番線検車庫に向かう309編成「せたまる」/2007年9月13日 上町車庫
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上町車庫に留置中の301編成「『玉電カラー』電車」/2008年5月22日 上町車庫
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上町車庫に留置中の306編成/2011年1月15日 上町車庫
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最後の営業運転を終えて入庫中の307編成「SDGsトレイン『美しい時代へ号』」/2023年5月1日 上町車庫
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上町車庫検車庫の窓に貼られた世田谷線開通100周年の手作りポスター/2025年2月3日 上町駅
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上町車庫検車庫の窓に貼られた世田谷線開通100周年の手作りポスター/2025年2月3日 上町駅
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上町車庫検車庫の窓に貼られた歴代車両のイラスト/2025年2月3日 上町駅